2024.2.28
貿易や国際物流において欠かせない「船荷証券(B/L)」。
未だに紙でやりとりされることが多いなか、欧州などを中心に電子化に向けた法整備の動きが目立ってきています。
当コラムでは船荷証券(B/L)の電子化にはどんなメリットがあるのか、なぜ未だに実現していないのかなどについて、分かりやすく紐解いていきます。
第1回目となる今回は、貿易や物流業界以外ではなかなか聞く機会のない「船荷証券(B/L)」そのものについて、基本的なところから解説いたします。
■船荷証券(B/L)とは
船荷証券(Bill of Lading、B/L)は貿易・海運業界において極めて重要な書類です。
貨物の輸送を担当する船会社によって発行され、下記のように複数の役割を果たします。
・出荷された貨物の受領証
・運送契約の証拠
・持っている人が該当する貨物の所有者であることの証書
貿易において、輸出者が確実に代金を受け取り、輸入者が確実に商品を受け取れることを保証するためには、船荷証券(B/L)が欠かせません。
船荷証券(B/L)には、船積み手配や契約上の必要性に応じて、さまざまな種類があります。
■船荷証券(B/L)の歴史
船荷証券(B/L)の起源は16~18世紀、重商主義が台頭した時代のヨーロッパに遡ります。
この時代、貿易が各国の主要な経済活動として盛んになり、貿易の重要性が増すと同時に、公平な取引を行うための商品の受け渡しを保証するシステムの必要性が増したことで、商品の所有権の所在と移転を証明する「権利証」が生まれました。
これが現代の船荷証券(B/L)の前身であるといわれています。
■船荷証券(B/L)が抱える課題
現代の貿易には欠かせない船荷証券(B/L)ですが、その性質からさまざまな課題も指摘されています。
例えば、船荷証券(B/L)はデータではなく紙の原本で海を越えてやりとりされるため、破損・紛失・遅延の影響を受けやすく、貿易における非効率や取引遅延リスクに繋がることがあります。
また、単なる紛失でなく盗難が発生した場合、さらに大きな問題に発展する可能性があります。
船荷証券(B/L)は仕組み上、原本を所持している人に貨物の所有権が発生します。
つまり、紛失や盗難によって船荷証券(B/L)が意図しない第三者の手に渡ってしまった場合、その第三者に貨物の所有権が正式に移ることとなり、甚大な損害が発生してしまうのです。
こうした課題は、いずれも船荷証券(B/L)を「原本でやりとりする」ことを前提として起こるものです。
つまり、船荷証券(B/L)を電子化し、データで安全かつ確実に移転することができるようになれば、これらを克服できるということです。
船荷証券(B/L)への移行は、国際貿易および国際物流業界を次のステージへ進めるための重要なファクターなのです。
(②に続く)