わかりやすく理解するステーブルコイン③:ステーブルコインのメリットは?

※本コラムは連載です。前回の記事はこちら

 

ステーブルコインの有用性:先進国と途上国の温度差

ステーブルコインはデジタル通貨市場において、価格の変動が少なく、安定性のある資産として急速に普及しています。

しかし、その有用性は国ごとに異なり、特に先進国と新興国との間で大きな温度差が存在しています。

連載第3回目となる今回は、ステーブルコインが先進国と途上国において、それぞれどのように利用され、どのような課題を抱えているかに焦点を当て、その重要性について考察します。

 

先進国でのステーブルコインのメリット

価格の安定性と投資保護:

先進国では、ステーブルコインはデジタル通貨市場での価格変動から、投資家を保護する手段として重要視されています。

価格の急激な変動が少ないステーブルコインは、デジタル通貨を保有する際のリスク管理に役立ちます。

 

デジタル決済の便益:

ステーブルコインはデジタル決済や送金において優れた選択肢のひとつであり、迅速かつ安価な取引を実現します。

こうした特性から、先進国ではデジタル経済と金融サービスの発展に貢献しています。

 

金融サービスの普及:

銀行へのアクセスが限られている地域においても、ステーブルコインは金融サービスの普及を促進します。

これによって、銀行口座を持っていない人であっても、デジタル決済を行ったり、貯蓄をしたりできるようになります。

 

 

新興国でのステーブルコインのメリット

通貨価値の保護:

新興国では一般的に、国内通貨の価値が安定していません。

ステーブルコインは通貨価値を保護し、資産価値の急激な低下から人々を守る手段として重要な役割を果たします。

 

金融包摂:

新興国では銀行口座を持たない人々が多いため、ステーブルコインは金融包摂*を向上させます。

モバイルアプリを通じて簡単にアクセスできるため、貯蓄や送金の機会が広がります。

*金融包摂(Financial Inclusion)・・・世界銀行による定義では「すべての人々が、経済活動のチャンス を捉えるため、また経済的に不安定な状況を軽減するために必要とされる金融サービスにアクセスでき、またそれを利用できる状況」のことを指す。

 

外国送金の簡素化:

新興国からの海外送金は高額な手数料がかかったり、外貨規制によってドルでの送金に数カ月もの時間がかかったりと、さまざまな不都合が生じることが一般的です。

ステーブルコインを利用することで、たとえば出稼ぎ先から祖国の家族への支援がスムーズになるなど、より低コストかつ迅速な海外送金が可能となります。

 

 

このように、ステーブルコインは先進国と新興国とで異なる有用性を持っています。

ステーブルコインは、法定通貨の価値が安定して保証されている先進国でも有用ですが、法定通貨でさえその価値が安定しておらず、円滑なドル需給が難しい新興国においては、特に有用性が高いと言えます。

政治的紛争が多発して国の銀行システムが頻繁に麻痺したり、銀行口座の普及率が低い地域では、ステーブルコインが不便さを解消する手段として活発に活用される可能性があります。

 

国際貿易・決済フローにおけるステーブルコインの魅力

 

1.送金の迅速性と低コスト

ステーブルコインを利用した送金は、銀行を介した伝統的な手段や国際送金サービスよりも迅速で、かつ低い手数料にて取引を行うことが可能です。

特に、売り手国と買い手国それぞれの銀行同士が直接連携しておらず、複数の仲介銀行を経由して貿易代金の決済を行う必要がある対新興国貿易の場合は、法定通貨ではなくステーブルコインを活用することで、より取引の効率が向上し、コストを抑えることができます。

また、スタンデージが開発する「モノ(電子船荷証券)」と「代金(ステーブルコイン)」をブロックチェーン上で同時交換できるシステム「デジトラッド・ペイメント*」を利用することで、取引の透明性も高まり、信用コストも抑えつつ、双方の信頼をもとに迅速かつ正確な取引を行うことも可能になります。

*スタンデージ開発の貿易決済システムについてはこちら

 

2.世界中どこからでもアクセスが可能

ステーブルコインはブロックチェーン技術を基盤にしており、インターネット環境さえあれば、どこからでもアクセスすることができます。

これにより、国際貿易において地理的な制約が減少し、新興市場との取引が容易になります。

特にアフリカ市場などの新興市場では、国の政策不安定によるCeFi金融網の不能化が珍しくありません。

こうした地域では特にステーブルコインを活用した決済・送金システムが有効に働きます。

 

3.信頼性とセキュリティ

ブロックチェーンは分散型台帳技術とも呼ばれ、データの改ざんが難しいため法定通貨と同程度の信頼性があると評価されています。

特に、外貨規制によって米ドルを取得することも、安全に保管することも難しい新興国地域では、現物ドルを保有するよりも、米ドルベースのステーブルコインを保有する方がより安全で確実な方法となります。

このように、ステーブルコインは国際貿易・決済フローにおいて、価値の安定性、迅速かつ低コストな取引、世界中でのアクセス可能性、信頼性とセキュリティの向上といった多くの魅力を発揮しているのです。

 

(④に続く)

Please follow and like us: