わかりやすく理解するステーブルコイン④:そのリスクと将来、CBDC

※本コラムは連載です。前回の記事はこちら

 

ステーブルコインとCBDC

「CBDC」という単語を目にしたことはあるでしょうか?
これもまた、最近世界的に話題になってきているデジタル通貨の一種です。

CBDCも法定通貨とは異なり、デジタル上に保管・運用される通貨という点で、ステーブルコインと共通点がありますが、ではCBDCとステーブルコインにはどのような違いがあるのでしょうか。
連載最終回となる今回は、「CBDCって何?」「どちらも聞いたことはあるけど、ステーブルコインとの違いがわからない」という方のために、わかりやすく解説していきます。

 

CBDCとは?

CBDC(Central Bank Digital Currency)は、日本であれば日本銀行のような、各国の中央銀行が発行する通貨のひとつで、伝統的な紙幣や硬貨ではなく、電子的な形式で発行および保管がされるデジタル通貨です。

CBDCは、中央銀行がデジタル技術を活用して国内の通貨供給を管理し、支払いシステムを効率化するために導入されることがあります。

通常、CBDCの価値は中央銀行が発行する法定通貨と完全に同等であり、国内経済において正式な通貨として認識されます。

2023年6月時点で11カ国がCBDCを正式採用しており、さらに53カ国が計画中、46カ国が研究中というステータスです。

ビットコインやステーブルコインと違って、CBDCの取引は発行当局である中央銀行によって管理されます。

また、デジタルトークンとは異なり、CBDCは金融投機の手段としてではなく、例えば銀行口座を持たない人に対しても、利便性の高い金融サービスや効率的なデジタル決済を提供できる手段として注目されています。

CBDCがオフラインで使用される法定通貨よりも安全な金融手段であるかについては、米国を中心に世界の中央銀行がさまざまな研究を重ねています。

CBDCは基本的にオンライン上で流通する法定通貨ですが、インターネットが接続されていないオフライン環境での決済も技術的に可能であるため、特に個人が口座を所有することが難しい新興国において、その優位性を発揮するとみられています。

そのため、日本やアメリカ、ヨーロッパといった先進国でもCBDCの研究は進められていますが、新興国の方がより早く導入に踏み切る傾向にあります。

 

ステーブルコインとCBDCの相違点

・発行主体
ステーブルコインはUSDTを発行するテザー社のように、民間の企業によって発行され、DeFi(分散型金融)方式で管理されます。
一方、CBDCは国の中央銀行によって発行され、CeFi(中央集権型金融)で運用されます。
そのため、CBDCはCBDCそのものが法定通貨と同じ扱いになりますが、ステーブルコインは裏付け資産として法定通貨の準備金とステーブルコイン発行額を1:1でペッグさせ、あくまで理論上で価値を同等にしているため、法定通貨と1:1の交換性を持っていても、ステーブルコインそのものが法定通貨である、ということにはなりません。

 

・価値の安定性
ステーブルコインは法定通貨と1:1の価値を最大限保証しているトークンですが、法定通貨とまったく同じレベルの安定性を持つわけではありません。
つまり、1USDTや1USDCは1USDと交換できるよう、その価値が最大限保証されるように設計されていますが、発行者の信用リスクといった問題が発生した場合、流動性が低下し、1:1での交換ができなくなる可能性があります。

 

画像はUSDT:USDのチャートです。おおよそ1USDT=USDが維持されているものの、いかなるときも1:1の交換関係が完全に保証されているわけではないことがわかります。

 

・利息の発生と運用リスク
CBDCは法定通貨と同じ扱いになるため、保有するだけでは利息や運用収益は発生しません。

各国の中央銀行や研究団体がCBDCで利息が発生するような措置を研究中であると発表していますが、まだ有意義な進展は見られません。
したがって、CBDCは投資目的の資産として活用するよりも、現金と代替可能かつ便利で迅速な決済手段として活用する方が適しているといえるでしょう。

一方、ステーブルコインは、流動性プール(Liquidity Pool)への参加やステーキングなどを通じて、自分が保有する資産を他人に貸し出すことができ、銀行預金のように利息が発生することもあります。
一般的によく知られているDeFiのP2P貸付サービスは、USDCやUSDTなどのコインに対して10%以上の利回りを提供しています(貸付金利や利回りは時期によって変動)。
預金やRPなどの伝統的な金融手段に比べ、利益を得ることができるという点で、ステーブルコインは収益性の高い投資先としても注目されています。
もちろん、ステーブルコインも株式と同様に、元本割れのリスクが存在することを忘れてはいけません。

 

ステーブルコインの未来

ステーブルコインはいずれ法定通貨に取って代わることができる、と楽観的に予想する人もいます。
しかし、安定性が保証された現行の金融手段に取って代わるにはまだリスク要因や不確定要素が多いこと、またステーブルコインを含むデジタル通貨すべてに言えることですが、まだまだ突破すべき規制が多いという点から、各国の金融政策決定者は、ステーブルコインの未来が完全に明るいものと結論づけるのは時期尚早であるとの見解を示しています。

しかしながら、約2,800兆円規模といわれる国際貿易市場におけるステーブルコインの活用期待値は非常に高いといえます。
特に対新興国貿易では、複数の仲介銀行を経由する必要があり、高額な手数料と長い取引時間を覚悟しなければならない従来の貿易決済方法とは異なり、ステーブルコインとブロックチェーンを活用した貿易決済方法が実用化されれば、時間とコストの両方を大幅に節約することができます。

これまで全4回に渡り、ステーブルコインとは何か、そしてCBDCとの違いについてご紹介してきました。
法定通貨とデジタル通貨をタイムレスにつなぎ、デジタル通貨の未来を開く鍵、ステーブルコイン。
安定した価値と革新的な技術によって金融市場に変化をもたらすこの貴重な資産、今後のイノベーションに期待しましょう。

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