【コラム】わかりやすく理解するステーブルコイン②:ステーブルコインは何がある?

※本コラムは連載です。前回の記事はこちら

 

USDTとUSDC

現時点ではUSDTとUSDCが最も代表的なステーブルコインです。
USDTの発行総額は855億ドル、USDCの発行総額は約246億ドル(2023年11月6日現在)で、それぞれ世界1、2位を占めています。

発行総額だけでなく、取引量も多く、流動性が高いため、私たちはいつでも好きな時に、デジタル通貨をUSDTとUSDCに両替したり、USDTおよびUSDCを米ドルに両替したりすることが可能です。

また、両ステーブルコインとも、世界で最も強力な基軸通貨である米ドル(USD)と1:1ペッグを維持しています。

このように、①発行量が最も多く、②流動性が豊富でいつでも取引が可能、③ドルと1:1ペッグ関係を維持しているという特徴から、USDTとUSDCは安定性が認められているのです。

 

では、2つのステーブルコインにはどのような違いがあるのでしょうか。

 

USDT

USDTは、2014年に香港に本社を置くTether社が発行したステーブルコインです。

USDTはいつでも米ドル、ビットコイン、イーサリアムなど他のデジタル通貨と交換することができ、USDT保有者はステーキングと流動性プールを通じて利息を得ることもできたため、USDTはステーブルコイン市場で先行者利益を享受し、急速に成長しました。

デジタルを用いたP2Pローンサービスを提供するDeFiプラットフォームは、USDTステーキングに一般的な銀行預金利息をはるかに超える10%の利息を提示するなど、注目を浴びています。

一方、Tether社は2021年まで米国商品先物取引委員会からの要求があったにもかかわらず、長期間ドル保有の内訳を開示しなかったという問題がありました。

Tether社が本当はUSDTの発行量分のドル準備金を保有していないのではないか、という懸念が広がり、4,100万ドルの課徴金が課されることもありました。

同社は最終的に2021年3月に保有量の内訳を公開しましたが、不十分な会計監査でTetherの会計事務所に100万ドルの追加課徴金が課されるなど、USDTの信頼性を損なう事件が相次いで発生しました。

この事件以降、現在に至るまでTether社は準備金の内訳を透明に公開しており、USDT発行量以上の準備金を常に保有していることを証明し、安定性を維持しています。

 

USDC

USDCは、2018年にサークルとコインベースが作ったイーサリアムブロックチェーン上の米ドルベースのステーブルコインです。

USDTや他のドル建てトークンと同様に、価格は1ドルに固定されています。

また、USDCはUSDTと同様に、さまざまなブロックチェーンをはじめ、イーサリアムと互換性のあるすべてのウォレットや取引所で送受信することができます。

 

一方、ステーブルコインの発行量や取引量ではUSDTが先行していますが、USDCはより安全なステーブルコインとして評価されています。

これは、USDCの発行元であるCircle社が米国政府の規制を徹底して遵守し、毎月準備金の監査内訳をすべて透明に公開しているためです。

しかし近年、ステーブルコインに対する米国政府の規制が強化され、多くのユーザーが政府規制に準拠したUSDCの代わりにUSDTを利用するようになり、その結果、USDCの発行総額はピーク時の2022年7月の560億ドルから半減し、2023年11月には246億ドルとなりました。

また、同社が2023年に高金利による流動性問題で破綻したシリコンバレー銀行に33億ドル規模の準備金を預けていたことが明らかになり、USDCとドルの1:1ペグの可能性を疑った資産保有者が大量にUSDTに離脱したこともありました。

2023年初頭のシリコンバレー銀行破綻事件を皮切りに、銀行リスクが世界的に波及し、USDCもリスクの露呈を免れることはできませんでしたが、現在は再び信頼を取り戻し、安定的に運用されているステーブルコインです。

 

PYUSD・GYENなど他にもたくさん、152種のステーブルコインが存在

巨大なUSDT・USDCのステーブルコインの他にも、152種類ものステーブルコインが市場に上場しています(2023年11月6日現在)。

皆さんにとって身近なPaypalが発行したPYUSDというステーブルコインもありますし、GMOインターネットグループ株式会社が発行した円建てのステーブルコイン(GYEN)もあります。

今や両替もステーブルコインでできる時代になりました。

 

(③に続く)

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